【イベントレポート】 映画を通してイスラエル大使とパレスチナ大使が並んで平和を願った感動の上映会。

9/28(土)に東京・高輪のユニセフ・ハウスで開催した「ユニセフ・シアター 国際平和デー記念『もうひとりの息子』特別上映会」の様子を報告します。

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                  イスラエル大使とパレスチナ大使が握手!

左から、アグネス・チャン日本ユニセフ協会大使、イスラエル特命全権大使ご主人、赤松良子日本ユニセフ協会大使、イスラエル特命全権大使ルート・カハノフ閣下、ロレーヌ・レヴィ監督、駐日パレスチナ大使ワリード・アリ・シアム閣下、令夫人、息女

 

この日は、「国連平和デー(9/21)」を記念した日本ユニセフ協会主催の上映会。駐日イスラエル大使、駐日パレスチナ大使のご一家が揃って来場するという記念すべき上映会になりました。また、当日朝6:30に日本に到着したばかりのロレーヌ・レヴィ監督も参加しました。

 

日本ユニセフ協会赤松良子会長からのご挨拶、ユニセフパレスチナ事務所から届いたビデオレターにつづいて、昨年11月にパレスチナガザ地区を訪問したアグネス・チャン日本ユニセフ協会大使が現地を知らない人にもわかりやすいやさしい言葉で状況を解説し、また「実は最初に映画のタイトル(英語題)を“THE OTHER SUN”とSON(息子)とSUN(太陽)を勘違いしてしまったんですが、本当にもうひとつの太陽があるんじゃないかと思わせてくれる希望のある映画です」と映画を紹介。

          

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       昨年訪れたガザ地区の報告をするアグネス・チャン日本ユニセフ協会大使(C)日本ユニセフ協会

 

次に、レヴィ監督が「東京国際映画祭の授賞式で私は“イスラエルとパレスチナの子供たちにこの映画を捧げたい”と言いましたが、今日こうして世界 の子供たちのために努力しているユニセフの上映会で皆さんに映画を見てもらえてとても嬉しい」と挨拶しました。

 

上映中は、満席の場内に笑い声が起こったり、固唾をのんだり、すすり泣いたり、映画が観客の皆さんに響いているのが感じられ、監督もほっとした様子。上映後には、東京国際映画祭プログラム・ディレクターの矢田部吉彦さんの進行で監督とのトークが行われ、レヴィ監督は「イスラエル人でもパレスチナ人でもないフランス人の自分にこの映画を語る資格があるか」自分に問いかけながらの映画製作だったと告白し、そのために脚本に何と3年もかけ、何度も現地に足を運び、撮影前の準備では4ヶ月現地に滞在したと明かし、さらにはフランス在住のアラブ人作家ヤスミン・カドラに脚本を監修してもらったこと、スタッフ全員にシナリオを読んでもらったこと、また撮影中も国籍も宗教もさまざまなミックスチャーで構成されたキャスト、スタッフの意見を日々取り入れたことなど誕生秘話を話してくれました。

 

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                     上映後トークショーの模様。

左から、東京国際映画祭プログラミング・ディレクター矢田部吉彦さん、ロレーヌ・レヴィ監督、人見有羽子さん(通訳) (C)日本ユニセフ協会

 

そして、このトークの後に、来賓ゲストとして来場したパレスチナ大使ご一家とイスラエル大使ご夫妻もご登壇。それぞれから感動的なメッセージをいただきました。

 

パレスチナ大使:

こんなに素晴らしい映画を作ってくれたレヴィ監督に感謝をしたい。私は彼女が描いた、“壁の向こう側に住んでいる者”として、状況がとても過酷であると皆さんにお伝えします。我々はこの20年間、ずっと平和について語ってきましたが、語るだけでは十分ではない、やはりアクションが必要であると思います。 私には5人 の子供がいます。皆に良い人生を送って欲しいし、それは隣国イスラエルも同じ。私たちが平和裏に共存することは可能だと信じています。こうしていま私はイスラエル大使の隣に立っているのですから。政治的な観点からは少し違ったところがあるかもしれません。しかし他の多くの部分で共通点があるのです。1つの土地に2つの国家、そして2つの国民がいて、それが平和に暮らすということを日本の皆さんにも助けていただければと思います。 

 

イスラエル大使:

いま私は涙で目が真っ赤になっています。女性として、母として、そしてイスラエル人として、この映画を横にいるパレスチナの皆さんと一緒に観ることができて、より深く感動しています。これまで2つの国の争いを描いた映画は数々あり、それはどちらか一方を非難する内容でした。しかし、この映画は違います。この映画は実際の人間について描かれ、人間とはみな同じ子供であり、母であり、兄弟であり、家族であるとこの映画は伝えています。楽観的という方がいるかもしれませんが、今こうして解決の方法を模索している段階では、こういう映画こそが必要なのだと思いました。パレスチナの方々もイスラエルの方々も長きにわたって苦しんできました。互いに尊重しあう形の解決法を探すことは可能であると思っています。大変感動しました。

 

イベントの最後には、レヴィ監督が「おふたりの大使の言葉を聞いて、私自身とても感動しています」と両大使と感動の抱擁を交わし、さらには、大使同士が固い握手を交わす場面も。その様子を間近で見ていたアグネス・チャンさんは「今日のこの集まりが奇跡とも感じられ、この瞬間に立ち会えたことにとても感謝しています」と感激の涙が止まらない様子でした。

       

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        イスラエル&パレスチナ大使と。平和の象徴であるオリーブを手にレヴィ監督。

                     (C)日本ユニセフ協会

 

レヴィ監督はあるインタビューで、映画の力を信じるかと聞かれ、「世界を変える力という意味なら、答えはNOです。でも、共有すること、受け渡すこと、交換すること、それならYESです。それは他者(the Other=もうひとり)の人間性を理解し、経験するための方法です」と答えていましたが、それを実感させてくれるような素晴らしいイベントになりました。